【フリーランス・経理担当者必見】エクセルで消費税を計算する方法・注意点まとめ
見積書・請求書を作成する場合、消費税を避けては通れません。
消費税についての判断を少し誤っただけで適正な利益が確保できなくなることもあるので、消費税について正しい知識を得て、正しい処理をすることが非常に重要です。
そこで、最初に、消費税についての基礎知識を解説した後に、エクセルを使った消費税の計算方法や、計算時の注意点を紹介していきます。
消費税の基礎知識
フリーランスでも消費税を請求できるのか?
フリーランス、個人事業主であっても、消費税を請求することができます。
消費税を請求しない場合にはどうなるのか?
消費税法上は、請求総額の108分の8を「消費税相当額」として納税しなければいけないということしか定められていません。
消費税を請求するかどうかは、好きに決められるのですが、仮に請求書に消費税という項目がない場合でも、消費税の納税からは逃れられないのです。
例えば、消費税分800円を請求せずに、本体代金の10,000円だけの請求をした(つもり)の場合。
10,000円は消費税込の金額と見なされて
本体代金: | 9,260円 | (=10,000円×「108分の100」) |
消費税: | 740円 | (=10,000円×「108分の8」) |
合計: | 10,000円 |
の請求をしたことになってしまうのです。
言い換えると、消費税の納税義務がある場合には本体代金10,000円の請求しかしていないつもりでも、実際には内税での請求だと取り扱われてしまい「10,000円」×「108分の8」=740円の消費税を納税しないといけないのです。
結局、消費税分の請求をしないということは、単に消費税相当額の値引きをしただけということです。
何も考えずに、消費税分の請求をしないことにすると、かなり損をすることになりますので、注意が必要です。
消費税が課税されない「免税事業者」でも消費税を請求できるのか?
免税事業者であっても、消費税を請求できます。
請求書での「消費税」という項目は、法律で決められたものではなく、単なる「請求の内訳」です。
ですから、免税事業者であっても、自由に記載することができます。
売上先から「あなたは免税事業者なんだから消費税分請求しないで」と言われたら?
前述したとおり、免税事業者であっても消費税を請求書の内訳に記入することは自由にできます。
ですから「消費税分請求しないで」という発言は、単なる「値引き交渉」だと考えてください。
- 相手担当者が無知な場合
-
時々、本気で、消費税を内訳項目に載せるのは不当だと信じきっている担当者がいるのも事実です。
その場合には、相手の言っていることに根拠がないことを丁寧に説明しつつ、粘り強く交渉してください。
- 相手担当者が確信犯の場合
-
逆に、相手側も、法律の裏づけがないことを百も承知で(消費税分発注単価を下げさせるために)確信犯で発言している場合もあります。
その場合には、単なる値下げ交渉ですから、値引きしてもいいと思うのであれば相手の要求を受け入れればいいですし、値引きしたくないと思えば突っぱねざるを得ないということになります。
いずれにしても、いったん取引価格が決まってしまったら、継続取引をしている限り後日、消費税の納税義務が生じたからといって「消費税分の上乗せ」に応じてくれる可能性は非常に低いです。
安易に妥協しないようにしましょう。
消費税の納税義務がないんだから、消費税分請求しないでも損しないんじゃないの?
そんなことはありません。
というのは、経費支払時に消費税を払っているため、売上時に消費税を請求しないと損をしてしまうのです。
例えば、売上・経費の両方に消費税がかからない状態で、
売上 1000-経費 600=利益 400
となるような取引があった場合。
消費税8%が課税されると次のようになります。
売上 1080-経費 648=利益 432
消費税の納税義務がない場合には、消費税は納税しませんので、売上と経費の差がそのまま利益になります。
消費税の納税義務がないために(ケース1)に比べて「32」だけ得をしています。
※消費税の納税義務がある場合には、期末に「32」の納税が出るので、最終的な利益は400となり「1.」と一致します。
ところが、消費税の納税義務がないからといって、請求を「1000」に下げてしまうと、次のようになります。
売上 1000-経費 648=利益 352
消費税の納税義務はありませんので、追加での納税は必要ありませんが、それでも利益が(ケース1)に比べて48も減ってしまいます。
まとめ
ここまでの話をまとめると次のようになります。
区分 | 内容 | 利益 | ケース1との差額 |
---|---|---|---|
ケース1 | 売上・経費の両方に消費税がかからない場合 | 400円 | - |
ケース2 | 消費税8%課税 納税義務なし | 432円 | +32円 |
ケース3 | 消費税8%課税 売上のみ消費税請求なし | 352円 | △48円 |
このように、消費税の納税義務がない免税事業者の場合、確かに、消費税額を全額請求する(ケース2)と、本来の場合(ケース1)に比べて、利益は大きくなります。
ただし、消費税の全額を請求しない(ケース3)と、本来の場合(ケース1)に比べて損をしてしまいます。
また、将来、消費税の課税事業者になったからといって、請求額に、消費税額を上乗せしてくれることはほとんどありません。
ですから、安易に消費税分の請求を止めてはいけません。
消費税の端数処理は?
特に、法律で決められていないので、切り捨て、四捨五入、切り上げのいずれでも構いません。
実務的には「切り捨て」が多いのではないかと思います。
以下、このページでも「切り捨て」を前提に話をしていきます。
エクセルを使った消費税の計算方法・逆算方法
消費税の計算(基本)
次のような計算式で消費税額を計算します。
- 消費税額=本体金額×8%
- 税込金額=本体金額×108%(あるいは、本体金額+消費税額)
実際には、int関数などの端数処理関数と組み合わせて使用します。
例えば、A2セルに本体金額が入っている場合、次のように計算をします。
税込金額から消費税額を逆算する
税込金額から本体金額を計算するには、次のように計算をします。
- 本体金額=税込金額÷108%
- 消費税額=税込金額÷108%×8%(あるいは税込金額-本体金額)
消費税計算を切り捨て計算する場合、逆算時は「切上げ」計算をすると、つじつまが合うことが多いです。
例えば、A2セルに本体金額が入っている場合、次のように計算をします。
源泉徴収が必要な場合の消費税計算
源泉徴収が必要な場合(例:外注費の支払い)であっても、消費税額は通常通り計算します。
本体金額が明示されている場合には、源泉所得税額は「本体金額」に対して計算すればいいことになっています。
実際に計算式の形にすると、次のようになります。
源泉徴収される場合の本体金額の逆算計算
源泉徴収されている場合に、手取額から本体金額・消費税を逆算するには次のようにします。
本体金額を100とした場合、差引請求額は96.98相当になります。
ですから本体金額は「差引請求額÷96.98」という計算式で逆算することができます。
あとは、本体金額に8%を掛ければ消費税額、108%を掛ければ税込金額が計算できます。
なお、多くの場合、手取額から逆算計算をする場合は本体金額が明示されていないはずです。このような場合には、先ほどとは違い、消費税込金額に対して源泉所得税の徴収をすることになります。
そのため、今回の計算では、源泉所得税の計算式を「③×10.21%」としています。
エクセルを使った請求書の作成
請求書上、消費税をどう計算するかについても、いくつか考えるべき点があります。
消費税は明細ごとに計算するか、総額に対して計算するか?
消費税の計算を明細ごとに行うか、全体に対して一括で行うかについてルールはありません。
ですから、どちらの方法をとっても構いません。
ただ、明細ごとに計算をしてしまうと、総合計時に本体価格と消費税のバランスが崩れてしまう場合があります。
上の例だと、左側と右側を比べると消費税が3円ずれてしまっています。
このように、税抜金額が半端な金額の場合、特に消費税を端数切捨計算してしまうと、本体価格と消費税の割合のズレが顕著になります。
(消費税を「四捨五入」計算したほうが、本体価格と消費税のバランスは崩れにくくはなりますが、ズレが0になるわけではありません)
バランスが崩れても、特に問題はないのですが、違和感を感じた取引先から問い合わせが来る可能性は高くなるでしょう。
ですから、どちらかといえば、全体に対して消費税額を計算したほうが無難かもしれません。
実費立替分を請求書に記載する場合
交通費、宿泊費等の「消費税が課税されるような」実費立替分を、通常の売上と合わせて請求する場合。
請求書の作り方としては、次の2パターンがあります。
- 実費立替額を請求書の明細に記載する。(仮に消費税が課税される分であっても)消費税を別記しない
- 実費立替額の本体価格相当額を請求書の明細に記載し、消費税を別記する
例えば、通常の売上100,000円(消費税抜)に加えて、宿泊費10,000円(消費税込)の立替がある、という場合。
請求書は、次の2パターンが考えられます。
- パターン1:支払総額を請求書に記載し「消費税率0%」にする方法
-
実際の支払額を請求書に記載するパターンです。
実際の支払総額にはすでに消費税が含まれているため、さらに消費税を乗せると消費税を二重に請求することになってしまいます。
そのため、消費税額を「0%」扱いにして対応します。
- パターン2:実費額についても本体価格と消費税部分に区分して表示する方法
-
実費額について本体金額と消費税部分を区分します。
わざわざ消費税抜金額を計算しないといけないので手間はかかりますが、F6セルの消費税額が本来の消費税額に一致するので、経理担当者にとっては見やすいです。
どちらの方法で請求書を作ってもいいのですが、パターン1のほうが簡単に作れるので、それでいいのではないかと思います。
経理処理のずれに注意
ただし、経理処理は、請求書の見た目とずれてしまいます。
請求書を発行する側も、請求書を受取側も、実費部分について「消費税8%課税仕入」で記帳をしないと、期末に納付する消費税額がずれてしまいます。
間違えやすい点ですので、お気をつけください。
消費税率が混在している場合の簡単な計算方法
例えば、次のような場合に、請求書中で消費税率が混在する場合があります。
例えば、
- 売上代金とともに登記・登録関係手数料・官製はがき代など、消費税非課税の費用を請求する場合
- 売上代金とともに広告費等の預り金を徴収する場合
- 実費請求を行う場合に、実費分を税込金額で表記する場合
このような場合には、次のように計算すると簡単に計算ができます。
明細ごとに消費税額を計算する場合
単純に「税抜金額×消費税率」で計算をして、必要に応じて端数処理をすればOKです。
全体で消費税額を計算する場合
次のようにsumproduct関数で「税抜金額」列と「消費税率」列を指定することで、消費税額が計算できます。
外部リンク、参考サイト
みんなのエクセル~初心者の使い方~
消費税(8%)を自動計算する数式設定
消費税の計算方法をシンプルにまとめられています。