執筆作業の裏側、出版までの経緯を公開します!
おかげさまで、3/9にインプレス出版から出版した《関数は「使える順」に極めよう!Excel 最高の学び方》の重版が決定しました。
発売から約1ヶ月足らずで重版が決まったのも、
- お買い上げ頂いたみなさま
- 本のことをブログ・ツイッター・Facebook・メールマガジンなどでご紹介頂いたみなさま
- Amazonなどでレビューを書いて頂いたみなさま
のおかげです。
まずは、お礼を申し上げます。
ところで、飲み会や勉強会などで、本を出版したという話をすると、ほとんどの場合、次のような話題になります。
- どういう経緯で出版することになったの?
- どれくらいの期間で原稿を書いたの?
- 原稿書くの大変だった?
私自身、本に限ったことではないのですが、他の人が何らかの作品を作ったときのメイキングの話題が大好きで、ねほりはほり聞いてしまうタイプです(^^)。
そこで、今回は、出版の経緯や、執筆過程での苦労話などを書いていこうかと思います。
この記事の目次
出版の概要
まず、最初に全体像です。
- 出版の打診を受けた日
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2017年7月19日
- 執筆期間
-
2017年7月22日~2018年2月20日(約7ヶ月)
- 書いた原稿の文字数
-
当初原稿で、約90,000字程度ありました。
このブログの文字数が約6000字程度なので、この記事15本分程度でしょうか?
そう考えると、意外と文字数少ないのかもしれませんね(苦笑)。ただし、ここから大幅修正が加わっているので、実際の文字数はさらに増えます。
体感では、半分弱は書き直している気がするので、最終的には100,000字~130,000字程度は書いているのではないかと思います。
出版の経緯
話は2017年7月にさかのぼります。
このブログの問い合わせフォームから、お問い合わせを頂きました。
出版社から打診が来た
最初に、お問い合わせを頂いたのは2017年7月19日のことです。
たった3種類だけ!?経理実務のsumif関数、sumifs関数の使い方 という記事を読んで、「3種類にパターン分けして説明をしているところが分かりやすい」と感じて、執筆を打診しようと思われたそうです。
その打診では、
- 関数が多すぎて覚えられないという読者向けに、関数を10個程度に厳選し解説した本を作りたい
- ビジネス書としても読めるエクセル本を作りたい
という企画趣旨で、本を書いてもらえないか?という内容でした。
打診当時の私のブログの状況
最初の記事投稿が2014年9月なので、2017年7月までで約3年間ブログを運営してきたことになります。
出版のお話を頂いた当時のgoogle analyticsのデータを見返してみると。
2017年6月1日~30日までの30日間累計では、次のような感じでした。
ユーザ数 | 112,029 |
---|---|
PV数 | 175,885 |
他の出版が決まったという方達と比べると、かなり少ないように感じます。
でも、これくらいのアクセス数でも、出版の話が来ることもあるということですね。
話の種に本を書いてみるか・・・
ということで、出版の問い合わせを受けたものの。
実は、私自身は、出版にはあまり興味がありませんでした。
- 時間をかける割りに、金銭的なメリットは少なそう
- 他人と共同で、長期的な仕事をするのが面倒くさい
- そもそも、出版したいという欲求がない
- 普段からニッチを攻めるタイプなので、マス媒体には向いていないという自覚がある
などなど、思い浮かぶことは後ろ向きなことばかり。
特に、個人的には、最後に挙げたものが一番致命的だと思っていて。
私のキャラクターとして「一部の人には大受けするんだけれど、多くの人には深く刺さらない」ところがあるので、出版には向いてないんじゃないの?という思いが非常に強かったのです。
とはいえ、せっかく頂いた話だから、一度くらい体験してみてもいいかな?話の種になるかな?というようなノリで、話を進めることにしました。
初打ち合わせからの企画却下
出版企画が動き出した直後、時期的には2017年7月あたりの話です。
初回打ち合わせ
2017年7月24日にインプレスさんにお伺いして、初回の打ち合わせをしました。
企画書を見せて頂いたのですが、ビックリしたのが、その企画書に私のプロフィールが詳しく載っていること。
アポを取るなら先方のことを調べるというのは当たり前なのかもしれませんが、いざ、それを相手からされてみると、とても気分がいいですね(^^)。
私のほうでも、あらかじめ目次案のラフを作っていたので、それを見ながら話をするなど、初回打ち合わせは、和やかに終了。
ちなみに、このときに頂いたスケジュールは、次のような感じ。
- 2017年10月 入稿
- 2017年11月 発売
若干、無茶なスケジュールだなと思いつつ(^^);、
- ホームページやセミナーの内容の手直しだからそんなに時間もかからないかな?
- 税理士業が忙しくなる12月の前に執筆を終わらせたい
という思いもあり、そのスケジュールで行きましょうということで打ち合わせ終了。
試しに本文を書いてみるが、あえなく却下
ところで、この時点で、私は少し不安を抱えていました。
それは、出版社の方針と私が書きたいものがマッチするかどうかです。
私が、エクセルのセミナーを行うときには、「直接的な解決策」よりも、むしろ「考え方」を重視しています。
当然、本を出版するにあたっても、「考え方」にスポットをあてた本を書きたい欲求が非常に強いのです。
ジャンルは違うのですが、私の中では「大人のための数学勉強法 」のような本を書きたいという思いがありました。
本の内容を抜粋したものがWEBで公開されているので、興味がある方はご覧ください。
→数学ができる人の頭の中-どんな問題も解ける10のアプローチ
逆に、本屋さんに並んでいるエクセル本といえば「・・・の技100」というような、「考え方」よりも、ひたすら「直接的な解決策」を重視する本がほとんどです。
そして、インプレス出版といえば「できるシリーズ」のような「直接的な解決策をひたすら並べる本」を作る出版社の筆頭なわけです(^^)。
実際、この時点で編集者の方が想像していたのは、たぶん、次のような関数を限定して、たくさんの技を紹介する本だったのではないかと思います。
- sum関数を使った技・・・15個
- if関数を使った技・・・15個
- vlookup関数を使った技・・・15個
- sumifs関数を使った技・・・15個
- countifs関数を使った技・・・15個
- その他の関数を使った技・・・25個
ところが、私のほうはといえば、こういう本は全然書きたくない(笑)のです。
そこで、どうせ却下されるなら早いほうがいいかということで、とりあえず自分が書きたいことをざっと第1章にあたる部分を書いて編集者さんに送付したのが7月28日。
ざっくりいうと、
「エクセルの数式を自力で組むための考え方とは?」
「エクセルの数式を組むために、日本語で作業指示ができるようになろう」
という内容の原稿で、分量は約15ページくらいのものです。
で、その日のうちに「これでは企画通せないので無理です」との返事が。
想定の範囲内だったので、あまりショックは受けませんでしたが、全て没になりました。
その没にした原稿の一部がこれです↓
エクセルが使えない原因はエクセルの知識不足ではない!?
たしかに、こんなノリの文章が、本の第1章にあったらちょっと重たいですよね・・。
最終的には、各関数ごとに5個~8個程度の例題(ケーススタディ)を扱う形で落ち着きました。
扱う例題は類書に比べると少ないですが、その分、かなりじっくりと考え方を伝えられるような仕上がりになったのではないかと思います。
記事執筆当初は平和だったが、構想を練り直す羽目に
実際の執筆作業を始めた2017年8月~10月頃の話です。
記事執筆は平和に進む
編集者の方と、どのような内容を書くか認識を合わせて、改めて原稿を書き出したのが8月初旬。
当初スケジュールに比べるとやや遅れ気味で、主要部分の原稿を、一通り書き終わったのは9月中旬頃でした。
そして、編集者さんとのやり取りを3往復くらいして、ある程度原稿が固まってきたのが10月初旬。
思ったよりも平和に記事執筆は進んでいきます。
あまりに平和すぎるので、編集者さんに聞いてみたところ、
「編集長チェックが入り出す、これからが本番ですよ(^^)」
とのこと。
その言葉通り、後に、かなりのハードモードに突入するのですが、この時点ではそんなこと想像もできません。
そんなものなかぁーと思いながらも、とりあえずは平和な日々が過ぎていきました。
知り合いに試し読みをしてもらうが撃沈
ある程度、原稿も進んできたので、編集者の許可を得て、知り合いに原稿を読んでもらうことにしました。
本を買うときには「第1章を読んて本を買うか買わないかを決定する」という話をよく聞きます。
そこで、第1章の原稿を渡して、感想を聞かせてもらうことにしました。
ところが。
感想を聞いてみると、全員口を揃えて次のように言います。
「誰に向けて書いているのかが、よく分からない」
要は、「この本が好きなのか、嫌いなのか」その判断材料にもならない文章だったということです。
個人的には、「この本は自分には合わない」という感想よりも悪い、最悪に近い意見なのではないかと思います。
さらに、私の事務所の従業員(だった人)に読んでもらったところ、まあ、辛辣な意見が出てくる出てくる。
「最初に例示がないからわかりにくい」
「すごくわかっている人が上から目線でいろいろ書いている」
「1章でショートカットキーをたくさん説明してるけど、関数の本としてはダメなのでは?」
「この1章では、論点があっちいったりこっちいったりしていて、読み終わったときにどこに連れて行かれるかわからない」
などなど、まあ、いろいろなことを言われました(苦笑)。
結局、5人くらいに読んでもらったのですが、「この本欲しい!」という人は一人も現れず。
このままだと売れないと悟ったので、全面的に原稿を書き直させてもらいました(泣)。
最終段階と思ったのに、原稿半分差し替え!?
2017年10月中は大きな動きがなくゆったりしていたのですが、11月に入って、編集作業が一気に動き出します。
レイアウト稿が出てきてからが本番
11月下旬に、本のデザインに落とし込んだ原稿(レイアウト稿)が届きました。
それまでは、原稿をWORDファイルでやり取りをしていたのですが、レイアウト稿が手元に来たことで、なんとなく本の体裁が見えてきました。
すでに原稿は何往復もしていますし、ここからは細かいチェックだけで済むんだろうな、、、と勝手に思い込んでいたのですが。現実は、そう甘くはありませんでした。
実際には、この段階から、次のような修正を入れることになりました。
- 解説する関数・機能の差し替え
- 例題の差し替え
- 説明文の差し替え
- 図解の差し替え
要は、ほとんど全部修正したということですね(^^)。
結果的には、最終締め切りの2月中旬までの間に結局「4往復~5往復」原稿のやり取りをしています。
内容的にも、体感で半分くらい原稿が差し替わったんじゃないか?というくらい大きく変わっています。
特に、締め切り目前の2週間(2月初旬)は、もう日中はずーっと原稿を見ているような感じで、もう本当に大変でした。
自分の道をいくか?一般受けを狙うか?
先ほど書いたとおり、レイアウト稿ができあがってから大量に修正を入れていったのですが。
特に印象に残っているのが「時刻」についての解説です。
当初、第6章では「日付」「端数処理」などと合わせて「時刻」についての解説も入れる予定でした。
私は、エクセルの時間計算で悩まない超簡単な方法でも書いているように、エクセル標準の「時刻」の機能は使うべきではないと思っています。
ですから、同じようなノリで「エクセル標準の時刻機能は使わずにエクセルで時刻を処理する方法」を書いた原稿を作成しました。
ただ、それを読んだ編集者さんから頂いた意見は、次のようなもの。
「それだと難しすぎるので、エクセル標準の時刻機能の解説に変更できませんか?」
少し悩みましたが、さすがに、自分の信念を曲げて書くわけにはいかないのと、他に書くべきことが山ほどあり何かをカットしないといけない状況だったことから、結局「時刻」については解説自体をカットしてもらうことになりました。
ここまで極端な事例はあまりないにしても、他の項目についても、編集者さんと「自分が書きたい内容」と「一般の人が読みたいと思う内容」のバランスを1つずつ吟味して、原稿を修正するという地道な作業を繰り返しました。
精神的にも肉体的にもかなり疲れましたが、こういうバランス調整のおかげで、ある程度みなさまに受け入れて頂けるような本に仕上がったのかなと思っております。
実際に書籍を出版して感じた、出版の「意外な」メリット
今回感じた、出版のメリットは次の2つです。
- 知名度アップ
- 構成や情報の伝え方についてプロの意見がもらえる
- 1.知名度アップ
-
本を出版するといえば誰でも思いつきますよね?
明らかに、知名度は上がってる気がしますし、早くもセミナーへの集客効果も出ています。 - 2.構成や情報の伝え方についてプロの意見がもらえる
-
本を出版する過程では、編集者さんから、次のようなアドバイスを頂けます。
「こういう表現にしたほうが伝わるよ」
「こういう順番で書いたほうが伝わるよ」
当たり前なのですが、これらのアドバイスは、本の出版だけではなく、セミナーの構成や話し方にも流用できるわけです。
ですから、結局、本の出版を通して、自分のセミナーの内容を改善するアドバイスがもらえていることになるわけですね。
期せずして、(間接的に)セミナーについての意見をもらえるというのは、相当貴重な機会でした。
まとめ
作業過程を振り返ると、かなり不細工な進め方しかできなかったのが個人的には痛いのですが、どうにか発売にこぎつけることができました。
実際に、自分で本を出版してみて、本の著者さんが口を揃えて「編集者のおかげで良い本になった」という意味が、心の底から実感できました。
たしかに、「0→1」の部分は、私のアイデアがベースになっているかもしれませんが、その後の「1→10」の部分は、編集者さんや本の感想を頂いた方々、その他ご協力頂いたみなさまの力がなくては到達できませんでした。
この場を借りてお礼申し上げます。
また、このように紆余曲折を経てできあった本ですので、できるだけ多くの方に読んで頂ければ、作者は泣いて喜びます。
気が向いたら読んでみてください(^^)。